昨年に引き続き、令和4年度も「佐倉市事業再構築支援補助金」が、7月1日から申請受付が始まりました。 このタイプの補助金はめちゃくちゃ珍しいですよ。
「佐倉市事業再構築支援補助金」とは、佐倉市内の中小企業者が、新型コロナ感染症の影響やアフターコロナを睨んだ新分野展開や業種・業態転換等の事業再構築に向けた事業計画の策定や、国の各種補助金申請にあたって、専門家の支援を受ける費用の半分を補助するものです。新型コロナの影響により各種給付金・支援金(要件が合えば支給される)やその不正受給問題がニュースで報道されています。一方、国(経済産業省)の経済施策としての各種補助金はそれぞれの公募要領(難解)に従い、事業計画書を作成し、必要書類を揃えて電子申請し、審査の結果、約5割程度しか採択されません。いくら立派な事業計画を策定したと自分で思っても、相対評価なので不採択になることがあります。事業者にとって、どんな事業計画を作成するば採択確率が上がるのか、公募要領を読んでも、ざっくりとした抽象的な表現ばかりなので戸惑う方が多いでしょう。国の各種補助金とは、「事業再構築補助金」だけではなく、「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」も対象です。 タイトルが「佐倉市事業再構築支援補助金」なので、「事業再構築補助金」だけが対象だと勘違いしそうなネーミングです。
一方、世の中には様々なビジネスコンサルタントが存在し、ネットでは「採択率○○%」、「簡単」、「安心」などをアピールする広告が多数出ています。その巧みな言葉に騙されて補助金額の20%以上や、何十万円から100万円超の申請サポート料(成功報酬との組み合わせ)を吹っかけられるでしょう。 補助金申請は、まず「めんどくさい」だけでなく、「どんな事業計画を作るか」に悩み、100%採択をコミットできる専門家はおりません。場合によっては、着手金だけ狙って、どこかで作成した事業計画のコピペするだけの自称ビジネスコンサルも紛れ込んでいるでしょう。
補助対象事業者、対象経費、補助金額、申請受付期間
補助対象事業者:
佐倉市内の個人事業主、中小企業、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、組合等
対象経費:
①事業計画策定のための相談、コンサルテイング等の専門家に掛かる費用
②国の各種補助金の申請にあたって、専門家の支援を受ける費用 (上記①で策定した事業計画ベースになるでしょう)
①だけでも申請可能。尚、現在、国の各種補助金のほとんどが申請者による電子申請(Jグランツ)となっていますので、申請すべてを丸投げできる訳ではありません。(そもそも事業者が主体となっていない、または丸投げしたと判断されたら採択されません)
補助金額: ①の上限は10万円、②の上限は20万円で合わせると最大30万円、補助率は1/2。 たとえば、専門家に①15万円、②30万円を支払った場合、佐倉市から、①の分で7万5千円、②の分で15万円を補助してくれます。この専門家に支払う額は、その専門家と内容を打ち合わせ、事前に見積書を出してもらうことが前提になります。昨年は①5万円、②10万円だったので今年は倍増しています。そして、②の上限20万円は、国の補助金を申請して不採択であっても出ます。
国の補助金申請を考えてみると、総額600万円の補助事業経費(設備費、広告宣伝費、開発費など)に対し、事業再構築補助金で補助率2/3が適用される場合、400万円の補助金獲得を狙うことになります。(400万円は融資でないので返金不要、ただし、雑所得として課税所得に含まれます) その事業計画作成と申請支援を専門家に依頼すると、ざっくりですが、着手金10万~20万円、成功報酬額40万円~80万円程度が相場でしょう。着手金だけでも大きな金額になりますので、「佐倉市事業再構築支援補助金」があれば、「やってみようか」と背中を押してくれる効果が出てくるでしょう。但し、どの専門家に依頼するのか、その目利きが重要になってきます。
申請受付期間:令和4年7月1日から令和5年2月28日
専門家とは
活用可能な専門家は、公認会計士、税理士、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士、民間コンサル等となっています。
当職の私見を述べると、公認会計士や税理士は財務分析から融資申請など経営数値の見方・分析力がある筈なので強力な専門家になり得ますが、確定申告時は超多忙であったり、人によっては記帳代行と税務申告に特化しているので事業計画作成は苦手という人がいるかも知れません。 社会保険労務士は、厚労省の助成金(労働者、雇用関連)の申請が専門なので、経産省の経済施策である補助金も得意な方に当職は出会ったことがありません。 行政書士は、国や地方自治体の行政機関への行政手続きの書類作成や代理申請の専門家で、申請支援は得意でしょうが、事業計画自体の作成が得意かどうかと考えると、バラツキが大きいと思います。 続けて、中小企業診断士は、経産大臣が認めたビジネスコンサル・事業計画作成のプロであり、補助金事務局の審査員に診断士が多いことを考えれば、頼りになるでしょう。 最後の民間コンサルというのは疑問です。こういう業務をするのであれば、税理士や中小企業診断士などの資格を取ろうと考えたことがある筈なのに、取得していないという民間コンサルが多いでしょうから、補助金申請については不安を感じることが多いでしょう。
どのタイプの専門家が良いかは一概には言えませんが、お付き合いのある士業さんや商工会・商工会議所などに、まずご相談されることをお勧めします。
因みに、当職は、行政書士兼中小企業診断士として、昨年度は50件程度の国の補助金申請のお手伝いを行いました。事業計画書作成のみから、認定経営革新支援機関としての役割、そして行政書士としての代理申請まで様々な関与をしており、年がら年中、土日祝日関係なく忙しくさせて頂いています。なお、採択率は非公開にしています。
申請に必要なこと
①申請書【様式1】
②法人の場合は、履歴事項全部証明書の写し、直近の確定申告書別表第一の写しと法人事業概況説明書の写し
②個人事業主の場合は、令和3年度の確定申告書の写し
③活用する専門家等の見積書の写し(見積書の日付は7月1日以降、令和5年2月28日の間)
④交付決定を急がれる場合は、市税の納税証明書の写し
⑤国の補助金申請をする場合、その公募要領等の写し(公募要領には100頁程度のものもありコピーが無駄なので、A4チラシがあれば代用できます)
申請書は郵送が基本ですが、当職の場合、物理的に近いし、ご担当の方も知っているので代理で持参し、世間話をしてきます。
実績報告と補助金請求
①実績報告書【様式3】
②交付請求書【様式5】
③事業報告書: 様式は任意ですが、専門家に業務報告のようなものを作成してもらえれば良いでしょう。(相談・コンサルテーションの内容や、事業計画の内容がわかるもの)
④活用した専門家等の領収書の写し(領収書の日付は7月1日以降、令和5年2月28日の間)
⑤国の補助金を申請した場合は、申請書一式の写し
国の補助金申請に必要な実績報告時の書類に比べたら、めちゃくちゃシンプルです。
国の補助金申請のメリット・デメリット
補助金申請とは、一般にめんどくさいことの連続で、途中で諦めてしまう事業者が多いことが実態です。 また、新型コロナの影響によって詐欺的・不正な申請や、それを幇助する人が増えてしまったようです。
個々の事業者にとって、自社の特徴・強み・弱み、競合他社、市場・顧客ニーズの理解、そしてどうやって売上・利益を確保・拡大するなどは毎日考え、悩んでいることでしょう。専門家に相談し、ちょこっと話しただけでどんな事業計画ができるのか、学者っぽい単語を並べた事業計画書ができたとしても実業に役立つものなのか疑わしいと感じる経営者もおられるでしょう。
補助金申請のメリットは、①返済義務の無い現金をもらえること(ただし、補助事業終了し実績報告後で、入金は申請から一年以上後のことです)、②補助金をきっかけにやりたいことを実現・前倒しすること(補助金が採択されなくても遅かれ早かれ取り組む事業である方がベスト)ですが、他に③客観的に自社事業を分析し、これから取り組むことに理由付け・色付け・数字化できることでしょう。 客観性や他の事業者の事業計画を作り続けてきた専門家の知識とノウハウを吸い上げ、自社の経営に意味付けや自信ができればベストですね。 そして、補助金申請の事業計画策定を通じて、行政その他の支援や融資申請が身近になる効果もあるでしょう。
補助金のデメリットも三つ述べておくと、まず①申請時の事業計画作成に労力・時間が掛かる、次に②申請から実績報告までの手続きが煩雑過ぎる(事務局から書類不備の指摘が多く、意味不明な指摘や事務局のミスも多く、その対応だけで時間が掛かる)、③補助金の公募要領のページ数が多いにも関わらず、使えない経費や、相見積が必要、あれダメ・これダメのルールが多く、不明瞭なケースがある。 「持続化補助金」は比較的簡単に採択されますが、採択者数が多いので、事務局の審査や回答が非常に遅く、「持続」しないので途中で、「もうええわ」と諦める事業者が出てきます。
たまに、デメリットの①について、「アンケートに答えたら、AIか何かで自動的に立派な事業計画書がポンとできる」みたいなニュアンスのネットの書き込みがありますが、100%嘘だと断言します。 申請時の事業計画書だけでなく、交付申請、変更申請や実績報告書でも実情に合わせて考えて作成しなければならないケースがほとんどです。特に最近は、事業計画の使いまわし(コピペ文章多用や似たような計画内容)は排除されます。
千葉県市川市でも似たような補助金が始まります。
市町村として珍しい「佐倉市事業再構築支援補助金」は、昨年効果があったのか、今年は千葉県市川市でも似たような補助金を行うようです。 市川市「経営力強化支援補助金」という名称で、総額15万円上限で、申請開始は8月1日から 専門家は 税理士、中小企業診断士、民間コンサルティング会社等の認定経営革新等支援機関に絞っているようです。
認定経営革新等支援機関って耳慣れない機関名ですが、主に商工会・商工会議所、信用金庫、税理士が多く登録されています。 経営革新計画という都道府県が承認する制度でその計画作成に実績があり、経済産業省によって審査され登録されるものです。何か資格試験があるものでなく、事業計画作成の実績に重点が置かれています。
因みに、当職も昨年6月、認定経営革新等支援機関に登録してもらっています。
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