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持続化給付金詐欺についての考察

持続化給付金は、令和2年度、新型コロナ対策の一つとして、大幅に売上が減少した事業者向け総額5.5兆円の給付金。その後、2年近くも経った最近、組織的な数億円規模の詐欺事件が連日報道されています。令和2年後半以降にも、沖縄県、兵庫県、京都府などでも散発的に詐欺事件が新聞に掲載されていたと覚えています。司法官憲が躍起になって調査したのでしょう。最近になって大型の詐欺案件、行政官による悪質な案件について、逮捕、起訴されたので、マスコミが集中的にクローズアップしているようです。

しかし、なぜ今頃、詐欺事件がクローズアップされているのか、その根本的原因についての考察してみます。

 

詐欺の手法

令和2年、当職も20件くらい持続化給付金や家賃支援給付金の申請をお手伝いしました。 訳の分からないチャイナウイルスという不安な中、千葉県内のお客様(既に、住民票、履歴事項全部証明書、確定申告書などの基礎的資料を持っていた)に対し、申請資料をPDF化したり、理由書を作成したり、電子申請の方法を教えたりした程度でした。パソコンに不慣れな方には、ノートパソコンを持ち込んで、代わりにデータ入力したりもしました。

 

申請書類のポイントは、①税務署の収受印付き確定申告書と、②売上減少した月の売上台帳でした。 ①は、e-taxの送信データでも代替可能ですが、紙で郵送してしまった人や控えを無くしてしまった人は、税務署へ納税証明書を取りに行かないければならないとのことでした。 また、開業特例(対前年同月比が無いので、年間の月平均売上高と比較する)を使う場合は、開業届の写しを提出することにもなっていました。 詐欺に関する報道によれば、学生や若者を勧誘し、この開業届を提出させた上で、確定申告書を偽造するという手法を使ったようです。 開業届は基本的に開業後2週間以内(?)に税務署へ提出するものですが、数か月経ってからも受理されます。 確定申告書で必要な部分は、第一表と、収支内訳表か青色申告決算書(2頁)のみ。税理士や役人ならば、適当な数字を入れてパソコンで簡単に作成することはできるでしょうが、報道によれば同じ数字を記載した確定申告書を使いまわしていたとのこと。収受印はどうやって付けたのか、詳しい報道は無いようです。青色の丸い日付スタンプの画像ファイルをコピペしてバレないように加工していたのかも知れません。(そもそも税務署によってはあのスタンプが薄かったり、少し欠けているケースが多々あります)

 

一方、②に関する売上高とは曖昧な概念だと思います。売上基準も税務署へ申告するもので、且つ業種によって基準はありますが、「引渡」「売掛」「入金」「受注」などの選択可能す。様々な時間的ズレやミス・勘違いが発生するし、「取り消し」「値引き」「返品」、即ちマイナス売上高も発生し得ます。 経理的には売上から経費まで発生ベースで計上すべきですが、多くの中小企業者は税理士へ丸投げか、数か月分をまとめて仕分けすることが実態(月毎にきちんと管理されていない)でしょう。 要は、大幅に売上が減少した当月の売上数字と言っても、不確かな数字、調整可能な数字でしょう。 

 

一方、確定申告時期は超多忙な税務署は、年間の課税所得(税金が取れるかどうか)が重要で、月別売上高をチェックする必要性は低いでしょう。白色申告だと確定申告書類に月別売上高もない。

即ち、「売上減少した事業者」を証明すること自体に、簡単に不正ができる温床があったと考えます。

 

詐欺が起きる根本原因

日本中で起きた不正申請に続き、経産省や国税庁の役人までが不正を行ったということ、また組織的であり、金額が億単位に膨らんだことから、厳しい非難が政府や行政機関に向けられているのでしょう。 詐欺犯人個人は、一般人であろうが、行政官であろうが、税理士であろうが、起訴され厳しく裁かれるべきですが、そもそもなんでこんなに簡単に不正ができるのかの根本原因を追究すべきだと考えます。

当職は、税務申告データや、住民票・社会保険等の個人情報が、行政機関間で活用できない法律体系になっているからだと考えます。行政機関がバラバラに持っている個人情報を統合して、AIか何かIT技術を使って比較・分析すれば、不正申請自体が困難になるでしょう。 その根本原因はマイナンバー関連法規制や個人情報保護法によってガチガチにしてしまって、行政機関が個人情報を使えない仕組みになっているからでしょう。 これは立法(国会)の不作為ではないでしょうか? 国会での予算審議も重要でしょうが、くだらない議論が多いと感じます。 政府(経産省)は「速やかに給付する」ことを目指したのことは良いことですが、審査を簡素化するのではなく、審査運用にITを活用し、ミスを減らし、不正を排除する工夫が少なかったことが根本原因だと考えます。

 

「性善説」か「性悪説」なのかはどうでも良いことで、政府を非難することは無駄な不毛な議論だと感じます。

 

今後の懸念

新型コロナ感染症が始まった2020年前半、米国では過去の確定申告(社会保険番号のSSNをベースに、所得、住所、銀行口座のデータ)に基づいて、業種別に、申請無しに給付金が勝手に振り込まれました。 職業を替えたり、基礎情報が変更になった国民に対してミスは多発したでしょうし、事業者個々の事情による不公平感もあったでしょうが、この速やかな給付には米国人の多くも驚いていました。

 

一方、日本は、外注先に多額で発注し、ガチガチルールの上でザル審査を行い、かつ警察力も使って不正審査と、不正金額(数十億円)の何倍も無駄な費用を掛けているのではないでしょうか?

 

金額的には、持続化給付金の不正被害は、(たった)0.1%程度だと推測します。 しかし、この不正の影響が、令和3年度の一時・月次支援金、そして令和4年度の事業復活支援金において、登録確認機関をによる事前確認を取り入れ、かつ、99.9%の申請者も不正をしているかもという目線による過度な審査、不正被害0%を目指すが如くの姿勢がが「不備ループ」に繋がっていると考えられます。「不備ループ」の背景は、「その事業を本当に行っているかの疑惑」や「コロナの影響による売上減少かの疑惑」です。そんな疑いを持って、「あれ出せ、これ出せ、やっぱり疑いは晴れない」というループにハマっている申請者がは全国で数万人はいるでしょう。 バカバカしい事象が政府非難に繋がっているのは仕方がありませんが、やはり根本原因を解決することが必要でしょう。

 

または、今回の集中した不正報道は、来月の参議院選挙前に、何でもかんでも政府非難の材料を報道しているだけなのかも知れません。

 

デジタル庁が発足して10か月経ちます。行政手続きの簡素化、個人情報の適正な運用、不正ができない仕組み・素早く発見できる仕組みをどんどん進めていただきたいものです。

 

一方、学生や若者を多くは、どんどん自主返還をしているそうです。真夏でもマスクをしている日本人らしい、今回のことで真面目な国民性も現れているのではないでしょうか?

 

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コメント: 1
  • #1

    お寿司 (日曜日, 05 6月 2022 10:41)

    お疲れ様です。

    馬鹿馬鹿しいコロナ騒動。
    不備ループ疲れました。

    以上