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相続時の不動産評価額について

相続が起きた時は様々な手続きをしなければなりません。市町村の役所への死亡届、お葬式やお墓、生命保険会社、遺品整理、戸籍収集、光熱費・通信費などの名義変更や解約など。 

その中でも相続財産の確認作業で止まってしまうことがあります。以前のブログに「相続税ってどれくらい?(1) 相続税額の基礎計算」に書きましたが、相続財産の中で不動産の評価額を計算しなければなりません。 

まず相続税がかかるかどうかですが、負債等を差し引いた相続財産の合計額が、相続税の基礎控除額を超えるかどうかです。 相続税の基礎控除額とは、「3,000万円+600万円X相続人数」で、配偶者と子供2名の場合は「3,000万円+600万円X3=4,800万円」になります。その相続財産の中で、金融資産も残高で数えやすいですが、不動産の評価額の計算が問題になる場合があります。 今売ったらいくらなのか、不動産屋に査定してもらうのか? 毎年、納付している固定資産税の評価額なのか? 誰に聞けば良いのかもわかりにくいので、簡単に説明してみます。意外に計算は簡単です。

 

不動産登記簿の入手

まず、対象の不動産の登記簿謄本を入手して確認した方が良いでしょう。お近くの法務局で「不動産用の登記事項証明書」の土地と建物の交付申請をします。どこの法務局でも入手可能で、窓口受取りだけでなく、郵送してもらうことも可能です。法務省の「登記・供託オンライン申請システム」(申請者情報の登録が必要)ではどこからでも申請できるし手数料が少し安くなります。

 

不動産登記簿は、①表題部(所在地、面積、構造など)と、②権利部(所有権と所有権以外の権利)大きく分けて記載されており、土地の評価には面積(㎡)の数値を計算に使います。そして、所有権の確認(故人の持分など)と共に、所有権以外の権利として抵当権などを確認します。 抵当権とは、不動産購入時にローンを組んだ場合に金融機関が担保とし抵当権を設定するもので、ローンの返済が終了していれば、その抵当権は抹消されています。他には、事業資金などでその対象不動産を担保にお金を借りていれば抵当権を設定されていることが記載されています。もし抵当権が抹消されていない場合は、その不動産を相続する方が残りの債務を返済する義務を負います。一般にローン契約時に生命保険に加入しますので、その場合は、故人の死亡保険金による返済手続きが必要になります。

 

不動産の評価

さて、相続時の不動産評価額は土地と建物でまったく違います。

建物の評価は毎年市町村から送られてくる固定資産税評価額の金額そのものなので最新の通知を探してください。固定資産税評価額も土地と建物に分かれていますが、公示価格や実勢価格と比べて低く評価されることが一般です。市町村の役人が見回って、3年に一度評価替えをするそうです。尚、対象不動産を相続する人は、法務局で相続登記を行うとき、登録免許税という税金を支払わなければなりません。その税金も固定資産税評価額(土地と建物の合計額X0.4%)が計算の基準になります。

一方、土地相続税評価額は国税庁が発表している路線価で計算します。 しかし、土地の価格っていろいろあってわかりにくいので以下の表にまとめます。路線価とは、国税庁が日本全国の道路につけた価額で、相続税だけでなく、贈与税の計算の時にも使用されます。 

 

  公示価格 基準値標準価格 固定資産税評価額 相続税評価額(路線価)
内容 一般の土地取引価格の指標   一般の土地取引価格の指標(公示価格の補足)

固定資産税、不動産取得税などの計算の基礎価格

相続税や贈与税の計算の基礎価格
基準日 毎年1月1日 毎年7月1日 1月1日(3年に1度の評価替え)

毎年7月1日

公表日 3月下旬 9月下旬 3月か4月 7月1日
決定機関 国土交通省 都道府県 市町村 国税庁
評価割合(目安) 100% 100% 70% 80% 

公示価格と基準値標準価格は基本的に同じ価格レベルですが、基準日と決定機関が違います。実際の不動産の売買価格(実勢価格)は、公示価格か基準値標準価格の通りではなく、交通や買い物の便、環境変化、地域の景気、人口移動、要は人気・不人気によって常に変動します。 相続時の土地の評価は国税庁のサイトで住所によって路線価(千円単位)が表示されています。また、2正面の道路に接している場合や、傾斜地の場合など補正方法も細々と決められています。相続税を納める対象になる場合は、税理士さんにお任せするか、故人が最後に住んでいた住所を管轄する税務署へ計算の相談をすることのが良いと思います。(どこの税務署も混んでいるので予約が必要でしょう)

 

土地の評価額の計算

路線価(千円単位)は数字とアルファベットで表示されており、その土地が面している道路の数字X面積(㎡)が評価額になります。 たとえば「50E」と表示された道路に面した「200㎡」の土地は、1,000万円となります。故人が100%所有していた土地であればこの1,000万円が相続財産額になり、もし80%だと800万円ということです。路線価に示されているアルファベットは借地権を有している場合の持分割合で、土地評価額の30%から90%、Eの場合は50%です。借地権は登記していないことの方が多いので、その土地を借りている、又は貸している場合は、この割合を使って計算します。

尚、相続した不動産相続を、もし売却する場合の譲渡所得税や節税など細かいことは「相続不動産売却 完全ガイド」が非常に参考になります。

 

最後に

以前、アメリカに住んでいた頃、不思議だったことの一つに一軒家の土地の境界が不明確なことでした。登記という制度がないし、詳しい公共の地図もないみたい、住宅を買う時の図面もテキトーです。 アメリカ人に聞いてみると、「隣家との境界に塀があればその塀まで、芝生で繋がっていれば、芝刈りをしたところまで」という返事でした。 隣人が良い人で多めに芝刈りをしてくれたら自分の土地の面積は減るのかな? 結局不動産の価値は㎡単位の面積には関係なく、実勢価格のみ。 実勢価格には、見た目、広い家か狭い家、間取り、環境、家の造作や古さ・新しさ、その他特徴で決まるようです。特に大きな立派な木があれば値が上がるという話も聞きました。 土地が余っている国は違いますね。