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企業経営に影響を与える法律② 独占禁止法

さくらい行政書士事務所 独占禁止法

独占禁止法は、正式な法律名を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、独禁法とも省略して呼ばれます。

私的独占、不当な取引制限(カルテル、入札談合等)、不公正な取引方法などを規制し、自由公正な競争を促進することが目的です。

独占禁止法は内閣府下の公正取引委員会で運用されており、日本経済の発展を望む経済産業省の管轄ではないことがポイントになります。

私的独占とは

「排除型私的独占」と「支配型私的独占」があります。

「排除型私的独占」とは、事業者が単独または他の事業者と共同して、不当な低価格などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害する行為です。具体的には原価割れ販売、排他的取引、抱合せ、供給拒絶、差別的取扱いなどになりますが、経営戦略・競争戦略の様々な手段との間に広いグレーゾーンを感じます。

一方、「支配型私的独占」とは、事業者が単独または他の事業者と共同して、株式取得や役員兼任などの経営支配力を強めて、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとする行為です。これもグレーゾーンが広そうです。

市場原理に即した市場独占(コスト削減によって従来価格より安価で提供したり、優れた商品やサービスを提供うることによって、消費者に受け入れられ、結果として市場を独占)と混同しないようにしなければなりません。要は「不当さ」「不公正さ」の度合いによることになるのでしょう。

 

不当な取引制限とは

不当な取引制限に該当する行為には、「カルテル」と「入札談合」があります。

「カルテル」とは、複数の同業事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売数量などを共同で取り決める行為です。

「入札談合」てゃ、国や地方公共団体等の公共工事や公共調達に関する入札に際し、事前に受注事業者や受注金額を決める行為です。

業界の利益確保、長期的な安定受注、安定した投資回収を考る気持ちを想像することはできますが、消費者や国民の利益に反する行為ということです。

 

不公正な取引方法とは

公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)を有する行為です。公正競争阻害性とは、①自由競争滅殺、②競争手段の不公正、③自由競争基盤の侵害に分類されますが、わかりにくいですね。具体的には、流通業界の再販価格維持、販売地域や取引先の制限する拘束条件付取引、不当廉売、他者製品を扱わせない排他条件付取引、優越的地位の濫用(購入強制、従業員等の派遣要請、返品、支払遅延など)

 

独占禁止法の運用

独占禁止法を専門に運用しているのは公正取引委員会です。公正取引委員会は、独占禁止法に違反する疑いがある企業を調査し、違反のあった企業に対して、その行為を止めるように命令(排除措置命令)や、違反行為によって得た不当な利益を国庫に納めるように命令(課徴金納付命令)を出すことができます。 これは、司法裁判を介さずにできる行政行為ですが、調査の時は個人宅も対象となり得ます。即ち、世間的には司法官憲(警察)による家宅捜査や取り調べと同じに見えるでしょう。長年真面目に働いてきたバリバリのサラリーマンが突如、犯罪者のように白い目を向けられる怖ろしさがあり、ご家族が可哀そうです。

 

実務上のポイント

市場における公正かつ自由な競争を維持、促進させることを目的とした独占禁止法ですが、当事者間の関係や、当該行為が競争を促進するものか制限するものかという観点が重要で、「不当」「公正」という判断が必要です。

「いやいや、そんな法律より商習慣が大事、自社(自分)が大事」と感じる方は、平成17年から施行された課徴金減免制度を思い出してください。これは最初に「やってしまいました」と頭を下げたら課徴金は全額免除、2社目以降5社まで減免、調査開始後は減免率が下がるという制度です。これによって「カルテル」や「入札談合」の摘発案件がどんどん増え、10年間で1,000件以上の摘発を受けました。 逆にこの制度を使って嵌められる怖れがあるかも知れません。 令和2年12月に改正があります。