自筆証書遺言が作りやすくなってから1年半。どこまで国民に知られているのかわかりませんが、来週7月10日からは法務局で、自筆証書遺言書保管制度が静かに始まります。
手数料は3,900円で、自筆遺言書を作成した本人が、申請書、住民票(戸籍表記有り)、身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)を持って、事前に予約を取って法務局へ出向かなくてはいけません。 法務省民事局のチラシを貼り付けておきます。
自筆証書遺言書とは
遺言書には、自筆証書遺言書の他に、公正証書遺言と秘密証書遺言と三種類の方法があります。詳しくはこちら。
簡単に言うと、公証役場で行う公正証書遺言は面倒くさいし費用が数万円かかります。秘密証書遺言も公証役場で行いますが、ほとんど使われない方法です。
一方、自筆証書遺言書は、名称の通り自分で書く遺言書です。ワープロではなく、全文および遺産財産内容すべて自筆ということは書き間違えが多発してしまいます。また、本人が自筆したものかどうかを争った判例もあります。
しかし、去年から間違いやすい財産内容は、たとえば、銀行預金残高や証券会社からのお預かり残高のコピーに、自署サイン・押印し添付しても良いことになりました。ただし、本文、すなわち誰に何を相続するかの文章は自筆しなければなりません。また、自筆証書遺言書を見つけた相続人は、必ず家庭裁判所で検認してもらわなけれなりません。検認がないと有効な遺言書とはならない意味です。
自筆証書遺言書のトラブル
自筆証書遺言書のトラブルはいくつか考えられます。
①相続が起きた後、相続人が遺言書を見つけられない。数年後に見つかったら遺産分割のやり直しという事態になるかもしれません。
②相続が起きた後、相続人が遺言書を見つけて封を開けてしまった。(検認前に封を開けたら無効になってしまいます)
③家庭裁判所での検認に一か月くらい時間がかかる。
④自筆証書遺言が複数見つかってしまった。(日付が新しい遺言書だけが有効です)
⑤見つかった自筆証書遺言書が本当に本人が書いたのか疑いが出る。
自筆証書遺言書保管制度のメリット
法務局という公の機関ですので、紛失や見つけられないというトラブルは減りますし、家庭裁判所での検認が不要となります。ただし、故人となる本人は遺言書を法務局で保管している旨を伝えておかなければなりません。
また、相続人が遺言書情報証明書の交付を受けた時や、閲覧した時には、その他の相続人等へ通知してくれるそうです。どうやって相続人等を特定するのかと疑問ですが、戸籍から相続人情報と各人の住所情報の管理をしているものと推測します。