新型コロナの影響により月売上高が50%以上減少した場合の「持続化給付金」(法人200万円まで、個人事業主100万円まで)と混同されやすい「持続化補助金」、5月1日以降コロナ対応型の公募要領の変更が重なり混乱気味ですので、このブログで整理し、また、申請ノウハウを纏めてみます。
正式には「小規模事業者持続化補助金」と呼び、「ものづくり補助金」、「IT導入補助金」と並んで経済産業省の主要補助金政策の一つです。対象は小規模事業者(従業員20名、または5名以下の法人と個人事業主)限定で、持続的な経営計画を策定し販路開拓等の取組に対して国が支援することが目的です。「ブランド力を高めたい」「商品を宣伝したい」「HPを開設したい」などに活用することができます。商工会・商工会議所に相談しながら申請をすることがポイントの一つになりますが、商工会・商工会議所の会員でなくても申請は可能です。詳細は日本商工会議所サイトに掲載されていますが、全部読むのは大変です。
H28年以前は応募数未公表で採択率は30%~60%と言われていましたが、採択者数は年間約2万者でした。しかし、令和2年度はコロナ型が加わり、「コロナ特別対応型」の第1回応募件数6,744件に対し、採択数5,503件と採択率82%に急上昇しました。今後もこの8割採択が続くかはわかりませんが、この機会に積極的な計画を考えて申請してみるのは如何でしょうか?
一般型とコロナ特別対応型の違い
■一般型はH31年以前からの持続化補助金で、上限50万円、補助率2/3以下(事業計画の経費合計に対し67%まで補助するが、金額は50万円までの意味)
■令和2年補正予算で「コロナ特別対応型」が加わり、これは上限100万円の補助率は2/3、または3/4。採択者には更に「事業再開枠」としてマスクや消毒などの費用として50万円の補助もあります。(おまけのようなもので別途申請が必要)
■「コロナ特別対応型」の条件は、補助対象経費の1/6以上が以下の3種類のどれかに合致することです。(合致するように考えることがポイントです)
A型:サプライチェーンの毀損への対応
B型:非対面型ビジネスモデルへの転換
C型:テレワーク環境の整備
■「コロナ特別対応型」の特例は補助金額、補助率だけではありません。「一般型」だと補助金交付決定通知書の受領後の経費しか対象ではありませんが、「コロナ特別対応型」だと令和2年2月18日以降の経費もその補助事業の中であれば認められます。また、「一般型」だと補助事業終了後、実施内容を報告し、その報告後に補助金が支給されますが、「コロナ特別対応型」では「概算払い制度」という制度によって、交付額の50%は給付決定時に支給されます。残り50%は補助事業終了後、実施内容を報告した後になります。
コロナ特別対応型の申請
■公募要領はいつ変更されるかわかりらないので、申請書類は最新のものを入手することが必要です。
「コロナ特別対応型」のサイトはこちら
■「コロナ特別対応型」の公募要領は4月末に発表され、既に第1回は5月15日、第2回は6月5日の必着で締め切られました。「一般型」の締切は消印有効なのに対し、「コロナ特別対応型」の締切は必着なので注意が必要です。
今後の締切は
第3回締切は、8月7日必着
第4回締切は、10月2日必着
■申請書類は以下の通り
①申請書(様式1-1):住所、名称、代表者名など簡単です。複数事業者で共同して申請する場合は様式1-2
②経営計画書(様式2):計画内容は最大5枚と制限があり、この計画の作り方に多少のテクニックが必要です。また支出経費をきちんと計算して記入が必要です。
③商工会・商工会議所発行の支援機関確認書(様式3)でしたが、第3回公募から不要になりました。
①②④⑤の申請書類一式のコピーを持参し、商工会・商工会議所の担当者へ説明し、支援機関として申請者を支援しますというお墨付きをもらいます。(これがないと申請できません)
④持続化補助金交付申請書(様式4)
申請し採択されたら提出する交付申請なのですが、先に出しておく形だけのものです。ここで注意することは、補助事業の期間を決め、補助事業の中に直接的に発生する収入があるかないか、そして消費税の適用かどうかです。 たとえば、補助事業の中でEコマース機能を追加した場合、補助事業期間中にそのEコマースによる売上収益分は補助金額から差し引かれます。(広告やHP作成だけの場合は間接的な効果とされるので差し引かれません)
⑤「コロナ特別対応型」の「概算払い制度」の請求書((様式5)
振込先金融機関の口座番号等を記入しますが、ここで市町村発行の「売上減少証明書」という前年比20%以上の売上減少月があることを証明してもらった証明書の添付が必要です。(振込先の通帳コピー添付を忘れずに) 「売上減少証明書」を発行してもらうには、前年の確定申告書(税務署の受領印付)と令和2年の月別売上台帳等が必要で、市町村によっては1週間かかると意地悪を言われますが、大抵2日ほどで発行してもらえる筈です。(千葉県佐倉市や八街市の場合ですが)
最後に上記申請書をホッチキス止めせず、クリップ一つでまとめ、USBかCDRに上記①②④のファイルを記録し同封します。(ファイル名は規定されています) 追跡できて受取り確認が取れるレターパックで送付するのが良いと思います。夕方の便に乗れば翌日、渋谷区の日本商工会議所に到着します。
補助金申請書類の押印には実印の必要はありませんが、市町村の「売上減少証明書」申請にはなぜか実印を求められます。また、添付する令和2年の売上原票はExcelで作っても、手書きでも良いのですが、押印しておいた方が良いでしょう。
事業計画の作り方
かなり面倒なのが、上記②経営計画書の中の5枚以内の事業計画です。事業計画の内容は販路開拓、新規顧客開拓に繋がることになります。5枚以内であるのに1枚だけのさっぱりした内容では採択されるか危ないです。5枚分きっちり考えて書き込む必要があります。書き込む内容は5項目で、写真、図、グラフを使って分かりやすい見た目も重要です。
1.「コロナ特別対応型」のA,B,Cのどの類型かを表示します。(一つ以上複数可能) A型だけだと補助率は2/3なので、B型又はC型を入れると補助率3/4になります。(B型又はC型だけでも3/4)
2.事業概要(自社の概要、市場動向、経営方針等)
・何をどう書けば良いか雛型がある訳ではありませんが、下記のような内容を書けば2ページ分くらいになります。
・自社の概要は、沿革、事業内容、強み・弱み&外部環境のSWOT分析や、強みを強調するVRIO分析の視点が効果的。強みを使って機会(チャンス)をどう掴むのか、強みによっていかに脅威を回避したり障壁をつくるのかを考えるとそれが経営方針に繋がります。
・外部環境は、定番のPEST(政治、経済、社会、技術)視点から地域の特性、5Forces(同業他社、新規参入、代替、売り手、買い手)の力関係に特徴があれば記述し、市場動向として市場全体のデータ(年齢別人口、産業指標、最寄駅の乗降者数など)を探し出しグラフ化すると見やすくなります。ネットで客観的な情報や顧客ニーズに繋がる情報を探すのも良いですが、あまり古いデータは使わない方がいいですね。
・経営方針は、経営理念やビジョンは定番。そして、「誰に何をどうやって」商売するか(事業領域といいます)を明確にした方が良いです。基本は新規顧客開拓や顧客の囲い込みによる市場浸透戦略になるケースが多いでと思います。 当事者にとっては長年やっている当たり前のことであっても、事業計画書の中に言葉として落とすことが肝要です。また、数字のある長期的計画(売上高とその根拠を考えながら、経費である人件費や設備投資、資金計画などをざっくりシュミレーション)も作ることができると好印象ですね。
3.新型コロナ感染症による影響
売上減少等の状況は、売上減少証明書取得に必要な2019年確定申告書と2020年の売上台帳等により月別売上グラフで示すことがベストでしょう。売上減少の具体的なトピックスや、営業自粛要請などがあれば説明を入れると良いでしょう。
4.今回の申請計画で取り組み内容
まず、事業名を30文字以内で記載必要です。計画内容は箇条書きでも良いでしょうが、経費項目とリンクさせて、わかりやすく、補助事業期間とその内容を月展のスケジュール表のような図を入れるとベターでしょう。
5.本補助事業でが経営上にもたらす効果
単純に売上が伸びる、利益が上がるだけではなく、上記2の経営方針に繋がる効果として、定量的または定性的な効果を作文します。定性的な表現としては、会社のモラール((士気)が向上する、社員のモチベーションが向上する、新市場開拓か新商品開拓に繋がるストーリーを考えると文章がスラスラ出てきます。
備考
本補助金の趣旨・目的に沿った上で、審査する方々(経営学やマーケティング学の先生方)の知識やこだわりが何かを推察し、事業計画の骨格(論理)と使用する単語を選ぶことが最大のポイントです。日々の商売を行っている事業主さんが熟知しているお客さん、商品、他社、市場のことを表現を変えて考え直してみる作業になります。
テクニックとしては、WordとExcel(グラフや図の作成)の基本的な操作ができれば見栄えの良い資料にできると思います。審査する人にとって文字だけの申請書を読むのは辛いものらしいです。グラフや図を箇条書きで説明してあげるとスムースに理解できるということです。 私の場合、2,3度お話を聞いてネタや基本情報のインプットがあれば、ネットにあるデータや情報を寄せ集め、市町村役場と商工会議所の手続きから、郵送まで1週間でできます。ちょっと自慢をすると、私はこのグラフと図を作るのが得意なんです。
最後にしつこく書くと、行政事務局は法律に基づいて厳正に採択する義務があります。給付金や支援金とは違い、積極的で前向き、且つ説得力のある事業計画を考えることが必要です。
尚、上記の事業計画の作り方は、ものづくり補助金(10ページくらい)やIT導入補助金でも同じフレームワーク、考え方で作れます。
ご注意ください!
コロナ禍の中、5月からの持続化給付金の不正受給問題が多数出ています。そのおかげで7月から始まった家賃支援給付金は公募要領のページがどんどん増えて、オンライン申請なのに面倒くさくて心が折れそうな気分になってしまっています。
本ブログの持続化補助金についてもネットでの情報では、「誰でもどんな企業・個人事業主でも受けられる」「コロナ禍で最大150万円まで補助される」「受け取ったら返す必要のない補助金」という言葉が目に入ります。 まず、どんな企業でも受けられるものではありません、小規模事業者と個人事業主だけです。きっちりとした事業計画(誰に何をどうやって)が必須です。 コロナ型で申請したら最大100万円までで、追加の事業再開枠50万円は使途が細かく絞られているので、自由度は低いです。 また、融資ではないので返済義務はありませんが、補助事業終了後、きちんと報告しないと補助金は出ません。最悪は返さなけれならない事態もあり得ます。
店舗の消毒・抗菌をする清掃業者から、「ターゲットが200件あるけど、事業計画作成を一社いくらでやってくれますか?何かテンプレートのようなものありませんか? 」という問合せがありました。 清掃業者さんとしてはビッグビジネスチャンスなのはよくわかりますが、一気に200件はできません。何かのテンプレートに入力すれば事業計画が自動で出来上がることはあり得ません。 同じ業種ならば共通項目はあるでしょうが、事業計画にはそれぞれの経営者や従業員の想いや過去の経緯、市場の特徴、販路開拓の手法など、一社一社すべて違い、かかる時間も違います。
要は、「簡単さ・容易さ」「早く」を謳っている情報には振り回されないようにした方が良いでしょう。