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新型コロナに打ち勝つ④ IT導入補助金

IT導入補助金とは

さくらい行政書士事務所 新型コロナ IT導入補助金

新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるために前向きな投資をを行う事業者に対し、「生産性革命推進事業」として、「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」という経済産業省中小企業庁の主要補助金制度に「特別枠」を設けました。今回は「IT導入補助金」についてご紹介します。

「IT導入補助金」はITツール導入による業務効率化等を支援するもので、対象は中小企業・小規模事業者全て、個人事業主も対象です。 補助額はA類型で30万円~150万円、またはB類型が30万円~450万円で、補助率はどちらも1/2。 申請はめっちゃ面倒くさいステップがあります。 まず、電子申請のために「gBizIDプライム」が必要です。簡単な操作で申請はできますが、実印を押印し印鑑登録証明書をし付けて郵送すると2週間程度かかります。

IT導入補助金が設立されている背景は、大企業と比べて日本を支える中小企業・小規模事業者の生産性の低さとIT投資の低さが比例しており、ITシステムの活用・ITツールの導入により生産効率や経営効率を向上させ、かつ時短勤務や労働環境の改善にも役立てる発想があるからです。 テレワーク導入もその一例ですが、厚生労働省の労働条件等関係助成金の中には労働時間改善目的でテレワーク導入支援があり、補助金と助成金が重なる部分もあります。

「IT導入補助金」の今後の公募は6月、9月、12月の三回締め切られ、その都度まとめて審査されます。


新型コロナウイルス感染症に関する特例

補助率を1/2から2/3へ引き上げ。在宅勤務制度(テレワーク)導入事業者に対し審査上加点される。


IT導入補助金の対象事業者

申請要領に対象事業者と申請要件をごちゃごちゃ書いているので割愛しますが、ほとんどの中小企業・小規模事業者は当てはまります。詳細はお問い合わせください。


導入するITツールの要件と補助対象経費

生産性向上にために、「IT導入支援事業者」(全国で1,000社くらいのIT事業者が指定されている)によりあらかじめ登録されたITツールの導入費が対象で、ITツール導入費は「ソフトウエア(プロセス)」、「オプション」、「役務」の3つに分類される。

【A類型】1つ以上の「ソフトウエア(プロセス)」→補助額30万円以上150万円未満
【B類型】5つ以上の「ソフトウエア(プロセス)」→補助額30万円以上450万円未満

補助対象外が多いのがこの補助金の特徴で、ハードウエア、組込み系ソフトウエア、スクラッチ開発、従量課金方式のサービス、広告宣伝費、緊急時システム、リース料金など。 事前に「IT導入支援事業者」によって登録されたITツールに限定する意志が明確です。 クラウドサービスを推進してのに。従量課金方式のサービスは対象外としているのは訳がわかりません。


めっちゃ面倒な申請の流れ

①まず経営課題を抽出し、どういう方向でどんなITツールを導入をするか、IT導入支援事業者の候補を検討する。【ここが重要です】
②IT導入支援事業者と導入できるITツールについて相談・商談し見積を入手する。
③申請マイページ作成→経営診断ツールがありその結果を確認する
④交付申請の作成と提出
⑤交付決定
⑥IT導入支援事業者と契約、導入、支払
⑦事業実績報告の作成と提出
⑧補助金確定通知、補助金の交付
⑨IT導入支援事業者によるアフターフォロー 

①②で諦めてしまう事業者が多いと推察します。または、IT事業者が補助金を餌に営業を仕掛けてくる形が多いでしょう。 詳しいことはIT導入支援事業者に相談するしかなさそうで、IT導入支援事業者の選定と、自社にとって必要かつ効果が期待できるITツールの選択が重要になります。


申請に必要な添付資料

法人の場合:履歴事項全部証明書、法人税の納税証明書(直近分)
個人事業主の場合:本人確認書類、所得税の納税証明書(直近分)、確定申告書B

添付資料は意外にシンプルです。


審査内容

①事業面の審査(課題認識、導入ITツールの効果、内部プロセスなど継続的な生産性向上・事業成長への取組、労働生産性の向上率の目標値)

②政策面の審査:国の推進している事業に取り組んでいるか(クラウド導入やテレワーク) 


考察

行政書士の立場から経済産業省の施策や行政手続きについて文句は言いにくい(関連法律を定めているのは国民の代表である国会議員、即ち主権者である国民)のですが、この「IT導入補助金」には疑問が多いです。IT導入支援事業者によっては、無用の長物を押し付けてくるケースもあるでしょう。テレワークなら何でも良いモノでもありません。ネットや使用PCの環境に大きく左右されるからです。または、ビッグデータやAIというコンセプトを真に受けると、データの入力や収集に費用と労力を使っても、結果を見て失望することもあり得ます。 しかし、IT導入支援事業者とその商材の登録要件を厳しくすれば、制度全体がガチガチになり一部のIT事業者への寡占も危惧されます。

結局、中小企業・個人事業主側に選ぶ目を持つしかないのでしょう。補助金が出るから導入するのではなく、補助金が出なくても遅かれ早かれ導入しなくては競争に負けてしまう・費用削減になることが明確などの動機が重要だと思います。

IT導入支援者事業者の皆さまへ

現在IT導入支援事業者の登録は約4,000社(1ページ50社記載の名簿は80ページくらい)ありそうです。単独で単品商材をターゲットを絞って営業活動されている企業から、幅広く多数の商材を取り扱っている企業もあります。 営業方法としては、補助金申請を前面に打ち出して機会を増やすことに注力されている企業・その担当者が多いでしょう。

その中で、単独登録ではなく、コンソーシアム登録をしている企業の構成員になる方法、または自社がコンソーシアムの幹事社として登録する方法は有効なケースが多くみられます。 具体的には自社商材だけで顧客の経営課題を解決するには部分的にしかならないケース、自社単独では営業人員や営業範囲が限られているので他社へ販売代理してもらうケースです。 後者の場合は、コンソーシアム幹事社として将来の体制も考慮したコンソーシアム協定書を作成し、且つ、個別に販売代理契約を行う必要があります。コンソーシアム協定書づくりには注意点が幾つかありますので、もし検討されている企業がいれば、お問い合わせください。

また、顧客の経営課題を抽出し、その解決策が真に生産性の向上に繋がる計画であるかを顧客と一緒に考え、補助金申請書へ落とし込み、その実行に注力することが重要です。 経営課題の解決にはITシステムを導入したからすぐに効果が出るとは限らないことが多く、そもそもの経営戦略、組織や人事、マーケテイングやものづくりなどの見直しと並行して進める事業計画づくりが肝になると信じています。 その事業計画づくりについても、お役に立てそうなことがあればお問い合わせください。