元サラリーマンによる個人事業主の日々

サラリーマン時代は個人事業主に対して漠然としたイメージしか持っていませんでした。通勤時間が無く(少なく)、好きな時に好きな仕事をやれて、平日はゴルフ三昧、人混みの多い連休を避けた旅行、複雑な人間関係や予算・目標のプレッシャーから解放され精神的に楽になるだろうなぁという感じで思っていました。

 

私が行政書士になった動機はプロフィールに記載しておりますが、一般的な行政書士の魅力(特徴)としては、①排他独占的業務の範囲が広いので業務の選択肢が多い、②小資本で個人事業が可能、③先生と呼ばれることがある...などでしょう。ネガテイブな特徴もあるでしょうが、このブログではやめておきます。 士業全般が個人事業主に向いているのでしょうが、他の士業と比べ、行政書士は法人(または法人所属)よりも個人事業主の方が圧倒的に多いようです。一昨年前から行政書士一人でも行政書士法人が設立できるので、法人が増えているのかも知れません。

 

都道府県の行政書士会に登録申請する際は、行政書士事務所の開設(住居地かその近くに一か所のみ)か、どこかの行政書士事務所または法人に所属しなければなりません。 事務所開設の場合、定型の職印を作り、外に事務所名の表示、鍵付きファイル棚や金庫の設置、報酬料の掲示(ホームページ掲載でも可)、机・椅子・本棚、打合せ場所などを図面や写真で示し、所定の事件簿や領収書などをもらって、業際問題や職務上請求書の使い方などの注意点の研修を受けなければなりません。都道府県の行政書士会によって登録手続きと必要な時間には大きな差(1か月から3か月)があるようです。

 

しかし、やっと行政書士登録が完了し、税務署に青色申告して行政書士事務所を開設(青色申告に記載した日を開設日としました)してみると、当然誰からも電話はかかってきません。 名刺やホームページを作って、静かな日々が過ぎていきます。

 

私の場合は、大阪の親の介護がある上、夏の中小企業診断士試験の勉強に集中し、積極的な営業活動を行なえないまま、ホームページのSEO対策と相続手続きだけやっていました。11月頃からぽつぽつと許認可申請・変更のお問い合わせや相談をいただき、行政書士っぽい業務を始めてみると、小さいことでつまずくことがいっぱいでした。実務本や研修資料をチェックし、関連法案をeGovからダウンロードしてざっと見て、行政機関の事前相談で手引き・申請書類の確認をすることもありましたが、準備不足や経験不足が原因の以下のようなトラブルで無駄な時間ばかりかかります。

・想定外の質問への対処(調べることが増え続けます)
・お客さんへのヒヤリング不足、メモのし忘れ(記憶力減衰)
・お客さんを訪問時、家が見つけられない、迷う
・正式な住所表示やお名前(漢字)の記載ミス
・かなの小文字入力や、定型Wordフォーマットの不具合
・見積書や請求書の作成ミス
・書類のメールや郵送の手間
・書類のファイリングの手間
・書類のスキャンやコピーの煩雑さ
・紙がない、インクがない、必要な資料が見つからない、あれがないこれがないだらけ。
・白黒でいいものをカラー印刷、1ページでいいのに何十ページも印刷してしまう

などなど

サラリーマンで海外営業職を20年以上、本社企画職を10年もやっていたので、対人関係(応対、ヒヤリング、説明・説得)、仕事の基本(報連相、纏め方)、パソコン操作などは問題ない筈でした。ところが、40台半ばから10年間も部長職だったので、細かい事務作業などは10年以上やっていなかったことに気づきました。新入社員に戻った気分です。請求書を発行するなんて20年以上振りです。

 

行政機関は平日しか空いていないし、お客さんとは週末にお会いすることが多く、書類の印鑑を押してもらうためだけに夜遅くや早朝になることもあるし、急に予定が変わることも当然起きます。

 

あれっ?「好きな時に好きな仕事をやれて、平日はゴルフ三昧、人混みの多い連休を避けた旅行」はどうなったのか?

 

いったん相談いただき業務を受けた限りは、その業務に没頭しお客さん第一に行動してしまうので、仕方がないことですね。 一方、行政機関の各担当の方々は本当に親切だと感心します。時々、法令解釈や提案をしたり、お客さんの気持ちや考えを説明してあげると、めっちゃ嬉しそうです。

 

サラリーマン時代は世の中は悪人が多いと感じていましたが、個人事業主をすると善人だらけに感じます。たぶん自分の姿勢・視点が変わったのでしょう。

 


士業支援サービスにご注意を

上記に電話がかかってこないと書きましたが、最初は(最近も)「士業向け支援サービス」なるものの電話やメールだけは入ってきます。 ホームページづくり、ホームページの集客(SEO対策)、業者さんが運営しているポータルサイトへの勧誘、書籍販売などです。 

■ホームページづくりに50万円から100万円くらいかかる業者もあり、打合せが多い上に完成後、少し変更するだけでも追加費用や1,2週間の時間がかかるというケース。(このHPはJimdoで自作しているので、いつでも変更・追加可能で、年間費用は1万円程度です) 

■「ホームページによる集客に興味はありませんか?」という電話は月に1回以上かかってきます。行政書士会などの名簿を見て電話してくるパターンが多いようです。「今、忙しいので電子メールでご提案や特徴を送ってください」と切ると、実際にメールが来ることはありません。 

■「地域別に各士業さんを絞っており、XX市では○○先生にお願いしたい」と数か月間の広告掲載料を数十万円と言ってくる業者(不動産、葬式屋など)もいます。「なぜ私を選んだのですか?」と突っ込んでも答えないし、そもそもそのポータルサイト自体のアクセス数や集客力があるのか疑問です。

■「○○先生のホームページを見ました。開業の経緯などを内容に、有名タレントをレポーターにした取材に興味はありませんか」という業者もあります。有名タレントと言っても、昔のタレントやちょっとマイナーな元スポーツ選手で、他に仕事がなさそうな人ばかり。個々の業務内容をレポートする力があるとは思えません。これも何十万円という単位の話です。

今は、業者さんの会社名などがわかれば、すぐにネットで本性がばれることが多いのに、よくこんな詐欺っぽい商売をやっているのか不思議です。

ただし、中には士業間ネットワークの構築などの真面目な取り組みや、士業業務の付加価値向上に繋がる提案を持っている業者さんもいるので、話を聞いてみないとわかりません。

 


3年ぶりの追加コメント

このブログを書いてから約3年が過ぎました。このブログは当職のブログの中では意外にアクセスがコンスタントに多いようです。「行政書士 個人事業主」というクリエでの検索が多いので、これから行政書士として開業する人や、これから行政書士試験に挑戦する人がアクセスしているのだろうと推測します。

 

そういった方々への追加のコメントをします。

 

この3年間はコロナ禍の中でしたが、当職にとっては幸いにも個人事業主として順調だと思います。 給付金・補助金の問い合わせが増え、無償相談や無償の事前確認を行ったことを契機になりました。当職の場合、中小企業診断士を兼ねていたので、各種補助金申請や融資申請に求められる事業計画書を作成することが得意です。 まったく経験の無い業種でも、要件に沿った理路整然としたストーリー、かつ合理性・実現性・納得性・たまに情緒性を織り交ぜた内容、グラフや表にする工夫・テクニックなどを駆使しています。そして、こだわりは見栄えの良さです。 どの補助金の審査員(中小企業診断士が多い)も短時間で数百社分を読むのですから、見栄え・インパクトや分かりやすさが重要です。

 

こういう没頭できる業務をやりながら、各事業者さんの、許認可申請や会社経営に関する事や、民亊的な事(相続、離婚、物権関連、債権関連)、そして外国人の在留許可や会社創立の相談が増えてきています。 上から目線の見方になってしまいますが、関連法令や事情・事例を知っているのと知らないとでは、当たり前のことですが、まったく対処や構え方が変わります。困ったことがあれば相談し、自ら話をするだけでも情報の整理ができます。当職は、客観的に対処法の提案、どういうメリット・デメリットがあるのかの説明、そして、関連法令の存在とその主旨説明をするだけですが、すべてを解決できるわけではありませんが、役に立つことも多くあったようです。 

 

個人事業主は一人で悶々となりがちでしょうが、当職の場合は、意外に様々な人とのオンライン、電話、メールでもやりとりが増えてきたようです。 その中に小さな遣り甲斐が蓄積してきた感じがします。

 

来週・来月は確定申告に集中しないとですね。

 

4年ぶりの追加コメント

本日は令和4年6月12日。 行政書士事務所を開業して4年が過ぎました。このブログは、今頃になってアクセス数が増えているので、これから個人事業開業を検討している方が増えているのだろうと想像しています。

 

4年も経つと青色申告の確定申告に慣れ、行政書士会、中小企業診断士会、商工会議所や市役所や県の産業振興課の実情も薄っすら分かってきました。自分がどれほど他人のお役に立っているのか客観的に判断することはできませんが、ホームページを見てのお問い合わせは週に何件もいただいています。 最近の傾向としては、許認可申請、補助金、相続、外国人のビザ申請の4種類の問い合わせが多いです。 基本的に電話かオンラインで、お話を聞いて、気が付いたことをアドバイスしたり、その手続方法を説明しています。 1時間以上お話ししても無料です。基本的にご自身でできる手続ばかりなので、一度お話しするとスッキリする方が多いようなので、少しだけお役に立っているのかなぁって自己満足しています。