相続税の具体的な計算や税務署類の作成、そしてその相談に応じることは、税理士の独占業務で、ファイナンシャルプランナーまたは行政書士として対応することができません。他の士業との業際問題については意識しておりますが、このブログでは、ファイナンシャルプランナーとして、FPの試験テキストに出てくるレベル、または国税庁のホームページで公開されているような一般知識を説明します。
どれくらいの相続税になるのか、どんな控除や非課税限度額があるのかをまったく考慮せずに相続関連の相談に応じることはお客様の利益にならないと考えます。 もちろん、具体的に正確な相続税の計算、及び相続税申告については税務署へ相談し、ご自身で行われるか、または税理士に依頼されるかをおすすめします。特に動画や相続税のシミュレーションのある相続サポートセンターのサイトは分かりやすいのでご参考にしてみては如何ですか?
というわけで「相続税ってどれくらい?」3回シリーズの1回目は、相続税額の基礎計算です。
(1)まず「相続財産」から「課税価格」を計算します:本来の相続財産+みなし相続財産+相続時精算課税制度による贈与財産+生前贈与加算-非課税財産-債務-葬式費用=課税価格が計算式なのですが、わかりにくいですね。
①本来の相続財産とは、被相続人が生前に所有していた預貯金、有価証券、不動産など
②みなし相続財産とは、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った生命保険金や死亡退職金
③相続時精算課税制度とは、生前に子や孫に贈与した時に税務署で手続きし贈与時の価額で相続財産に加算する制度
④生前贈与加算とは、相続開始前3年(令和6年1月以降は7年まで延期)以内の贈与(贈与税の基礎控除110万円以下であってもです)
⑤非課税財産とは、お墓、仏壇、仏具など
⑥債務は、借金や未払いの税金・社会保険料など
⑦葬式費用は、火葬、埋葬料、通夜・告別式の費用。香典返戻費用や四十九日の法事費用は含められません。初七日の法事費用も含めないことになっていますが、最近は告別式自体が死後数日経ってから行われるので、初七日も告別式に含まれるケースが多いでしょう。
(2)次に、上記「課税価格」から「遺産に係る基礎控除」を差し引いて「課税遺産総額」を算出します。「遺産に係る基礎控除」は3,000万円+600万円X法定相続人数。法定相続人数には相続放棄した人もカウントしますが、複数の養子がいた場合は養子は1人または2人までしかカウントできません。 たとえば、法定相続人が配偶者と子供2人だとすると、「遺産に係る基礎控除」は4,800万円となり、「課税価格」が4,800万円以下であれば、相続税の納税はありません。税務署へ届け出る必要もありません。
(3)「課税遺産総額」がプラスであれば、法定相続分で取得したと仮定して、各人の仮の相続税額を計算し、合算して「相続税の総額」を計算します。
たとえば、「課税価格」が1億2,000万円で、法定相続人が配偶者と子供2人だと、「課税遺産総額」は7,200万円となり、各人の仮の相続税額は、
配偶者:3,600万円x20%-控除額200万円=520万円
子供A:1,800万円x15%-控除額50万円=200万円
子供B:1,800万円x15%-控除額50万円=200万円
「相続税の総額」は920万円となります。
(4)遺産分割協議や遺言により分割する相続財産は、不動産や価格変動のある有価証券もあるので、法定相続分通りにきっちり計算できないのことが普通です。そこで各人の算出税額は「相続税の総額」に、実際の按分割合を掛けます。
たとえば、上記(3)の例の「課税価格」が1億2,000万円で、配偶者が8,000万円、各子供が2,000万円で分割するとした場合、
配偶者:920万円x(8,000/12,000)=613万円
子供A:920万円x(2,000/12,000)=153万円
子供B:920万円x(2,000/12,000)=153万円
という計算になります。ここからさらに税額軽減や控除がありますので、その内容は次回へ
補足:平成27年の相続税改正前までは「遺産に係る基礎控除」を5,000万円+法定相続人数x1,000万円でした。上記(2)の例だと、8,000万円以下の課税価格であれば、相続税の納税義務はなかったわけです。これって静かに改正された記憶ですが、相続税の対象範囲が一気に広がり、何十万円単位で納税額が影響したケースは多々あったと思います。