母国の国籍を離れて日本人に帰化することは一朝一夕にはいきません。 各種在留ビザや永住ビザの入国管理庁ではなく、法務省(法務大臣許可)へ申請するのですが、必要な書類は大量になります。 提出された書類に基づいて各種調査が行われるので、許可・不許可が判明するまで1年程度かかります。
申請書類を提出・受理されても必ず許可されるとは限らないものです。このような不明瞭な原因は「帰化を許可するかどうかは法務大臣のの裁量権が広い」ことです。 過去の許可・不許可事例を読んでみても明確な線引きがわかりません。 住所地を管轄する法務局、または地方法務局の担当官と面談し(申請書類一式手渡される)、書類収集・作成時点で相談・質問しながら進めることがポイントです。
注意点は、
①小さな交通違反でも隠さず記載すること、もし申請中に交通違反などを起こした場合は正直に報告すること。
②過去の身分関係の官公庁などへの届け出た書類(出生届など)との食い違い(父母の名前など)を起こさないこと。 訂正できるものは訂正する、または、正直に担当官に相談すること。
③日本語の読み書き、会話の能力には基準はありませんが、「小学校3年生以上の日本語能力」ということになっているようです。
④15歳以上ならば、帰化の動機書は必ず日本語で自署が必要です。「日本社会への貢献」の意志を簡潔に表現することがポイント。 他にも細々とした注意点が多数あります。
帰化申請の要件や必要書類などはこちら
国籍法
帰化申請できる条件は国籍法の第5条から第9条に限定されています。
【 】にコメント・解説を入れてみます。
昭和二十五年法律第百四十七号
国籍法
(この法律の目的)
第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
(出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
【米国のような属地主義ではなく、日本は属人主義といわれます。米国では不法移民であっても米国内で生まれたら米国国籍を取得できますが、日本は上記に限定されています。また、昭和59年までは父系主義だったので、外国人の父と日本人の母の子は日本国籍が取得できない問題がありました。】
(認知された子の国籍の取得)
第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
【認知をするということは、認知した人の戸籍に記録が残るということですが、戸籍を移すとその記録は新しい戸籍には表示されません。将来、認知した人が死亡し被相続人になった時、遺族がその認知に初めて気づくこともあり得ます。因みに、認知した子は非嫡出子と呼ばれますが、嫡出子と全く同じ相続権利があります】
(帰化)
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
【この法務大臣の許可裁量が広いことが帰化の難しさです】
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。【住所条件、引き続きなので通算ではありません】
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。【能力条件】
三 素行が善良であること。【素行条件】
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。【生計条件】
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。【二重国籍防止条件、どこかの国会議員がこの国籍法違反状態にままでしたね。どう考えても重過失だと思います】
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。【不法団体条件、〇〇党はこれに当たるのではないでしょうか?】
2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。【国籍離脱を認めない国としてブラジルが有名ですね、他にもあるのかも知れません】
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き十年以上日本に居所を有する者
【住居条件の緩和です。住所と居所を分けています。住所は住民票を登録している地、居所はたとえばホテルや他人の家に同居している地の違いです。】
第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。
【住居条件と能力条件の緩和】
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
【簡易帰化と言われる大幅な条件緩和です】
第九条 日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
【大帰化と言われますが、まだ実績はありません。少子高齢化の問題解決の一つとして、どんどんやっても良いのではと思います】
第十条 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければならない。
2 帰化は、前項の告示の日から効力を生ずる。