日本に永住、帰化、難民の考察

外国人の永住者は延べ80万人近く(他に特別永住者が33万人)、2018年度は約6万人が永住許可申請を行い半数の約3万人が許可されています。(許可率50%) それに比べて、帰化許可申請は2018年度1万人が申請し、約9割の9千人が日本人に帰化しました。(許可率90%) 一方、難民申請は2018年度1万人に対し、難民認定はたったの42人(他に人道上の配慮による在留許可が40人)です。(認定率ほぼ0%)

 

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永住と難民は入管法、帰化は国籍法と法律根拠が異なり、許可要件に違いがありますが、許可率(認定率)だけを見ると、日本は難民には非常に厳しく、永住許可も半数は不許可になるのに対し、日本人への帰化は許可されやすいということになります。

まず、難民については1980年台に難民条約を批准し難民認定制度を開始。一時、インドシナ難民の受入れが増えましたが、陸続きの国ではないので、そもそも国境に難民が押し寄せるという事態がなく、飛行機または一部船で何らかの在留許可を得て入国した後、難民認定申請を行うということでしょう。近年の申請者のほとんどは出稼ぎ難民といわれ、難民条約の趣旨である「人種、宗教、国籍、若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する~」と長~い定義に当てはまらない申請者がほとんどなのでしょう。そもそもこの「恐怖を有する」という定義に当たることを申請者本人が立証すること自体が難しいと感じます。

 

次に、永住許可については、行政書士などが取次申請する場合は許可率が高いという話があります。きちんと許可条件を抑えて書類集めをするか、許可条件が揃うまで申請しないからだと思います。日本に在留する外国人があの永住許可要件を理解し書類を揃えるのは大変面倒なことだと思います。また、法務大臣の裁量範囲が広いので、どういう場合で許可・不許可になるのか事例を見比べてもよくわかりません。

帰化についても書類集めも面倒でしょうが、そもそも国籍を捨ててまで日本人に帰化したい外国人の絶対数が少ないでしょうし、日本語や日本文化の壁が大きくあるでしょう。実際、インドシナ難民を除けば特別永住者の帰化がほとんどです。

 

欧州各国で難民問題が深刻化し、難民に厳しい目を向ける政権・勢力が増えてきています。情報やビジネスの世界で進んでいるグローバル化、ボーダーレス化というのは国籍、永住についてはまだまだ未来の話のような気がします。

 

2023年10月追記

永住、帰化、難民の考察

4年ほど前に書いた本記事はアクセス数は多くないものの、平均して4分以上読まれています。 近年、難民申請の増加や外国人による事件の多発が社会問題化し、テレビの報道番組でもよく取り上げられている影響でしょう。

 

行政書士として、永住許可や帰化許可の申請を数件行いましたが、申請書類のページ数の多さに驚きます。 ページ数が多くなる理由は、パスポートの前頁や年金記録などのコピーです。 単なるコピーですが、申請者の自宅に持ち込む小型の複合プリンターが大活躍しています。申請書自体の作成は難しくはありませんが、申請者の日本での生活状況や家族状況を聞きながら、許可要件に沿った必要書類を集め、補足説明の理由書を追加することにかなりの時間がかかります。当職の場合、英語対応可能なので、無料相談だけは多いのですが、いざ突っ込んで申請要件に必要な情報を取ろうとすると連絡が取れなくなるケースがあります。申請が無理だと理解しながらも、対応してくれそうな弁護士か行政書士を探しているような気がします。

 

一方、ウクライナやパレスチナなど中東諸国からの難民申請が増えているでしょう。または、起きては欲しくない有事のケースですが、近くの国から難民が押し寄せることがあるかも知れません。難民申請のサポートについてはまだ経験がありませんが、下記出入国在留管理庁URLの難問申請手続を見る限り、この申請には相当な準備、補足説明資料の添付が必要だと推測します。 この簡単な申請書に必要事項を書いただけでは審査が十分にできないケースを予想することができます。

難民申請手続